中小企業の生成AI、”入力してはいけない情報”の線引き
ChatGPTをはじめとする生成AIは、文章の作成や要約、アイデア出し、メールの下書きなど、中小企業の日々の業務を大きく助けてくれます。使わない手はありません。
一方で、使い方を間違えると情報漏えいにつながるという、新しいリスクもあります。国の個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用について注意喚起を行っているほどです。
大切なのは「使わない」ことではなく「安全に使う」こと。この記事では、福島県の中小企業向けに、生成AIの便利な使いどころから、何を入力してはいけないのか、なぜ危ないのか、そして安全に使うための具体的なルールまで、製品を売らない中立の立場でお伝えします。最後に、そのまま使える社内ルールのひな形も付けました。
まず、生成AIは「どこで役立つ」のか
リスクの話に入る前に、良い面も確認しておきましょう。中小企業でも、生成AIはこんな場面で時間を生み出してくれます。
- 文章の下書き:お知らせ、案内文、ブログ、SNS投稿のたたき台づくり
- 要約・整理:長い資料や議事録の要点まとめ
- 言い換え・添削:かたい文章をやわらかく、誤字脱字のチェック
- アイデア出し:企画やキャッチコピーの案を大量に出す
- 調べ物の入り口:知らない用語や制度のざっくりした把握(※最終確認は必須)
ポイントは、「たたき台を作る」「作業の下ごしらえをする」用途と相性がよいこと。うまく使えば、少人数の会社ほど効果を実感しやすいツールです。だからこそ、安全に使う土台を整える価値があります。
なぜ「入力する情報」に注意が必要なのか
いちばんの理由は、生成AIに入力した情報は、自社の外(サービス提供者の管理下)に渡るという点にあります。
無料版のサービスなどでは、入力した内容がAIの学習(次の回答をよくするための材料)に使われることがあります。学習に使われた情報は、巡り巡って別の利用者への回答に出てしまう可能性がゼロではありません。つまり、社外の人にうっかり資料を手渡してしまうのと、構造的には似たことが起こりうるのです。
これは想像上の話ではありません。過去には、社員が業務効率化のために社内のソースコードや会議資料を生成AIに貼り付け、それが外部に流出したとされる事例が実際に報じられています。悪気はなく、むしろ”仕事を早く進めよう”という善意から起きるのが、この問題の怖いところです。「便利だから」と何でも貼り付ける前に、いったん立ち止まる習慣が、会社を守ります。
入力してはいけない情報(4つの分類)
具体的に、次の4種類は生成AIに入力しないのが原則です。
① 個人情報 顧客・従業員の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、マイナンバー、顔写真など。個人を特定できる情報全般です。
② 取引先・顧客から預かった機密情報 契約書の内容、非公開の名簿、図面、仕様など。これらを漏らせば、自社だけでなく取引先の信用も傷つけ、契約違反や損害賠償に発展しかねません。
③ 自社の未公開・機密情報 見積書、原価、レシピ、設計データ、ソースコード、経営数字、未発表の新商品・企画など。競争力の源泉になる情報です。
④ パスワード・認証情報 ID・パスワード、APIキー、社内システムのURLなど。これらは、どんな場面でも入力してはいけません。
業種別・「つい入力しがち」なあるある
自社に置き換えて考えられるよう、うっかり入力しがちな例を挙げます。心当たりがないか、点検してみてください。
- 小売・サービス業:クレーム対応の返信文を作るとき、お客様の氏名や連絡先ごと貼り付けてしまう
- 製造業:不具合の相談で、図面や仕様、取引先名を含んだ資料をそのまま貼り付けてしまう
- 士業・管理部門:契約書や申請書の要約を頼むとき、当事者の個人情報が入ったまま渡してしまう
- どの業種でも:議事録や見積の清書を頼むとき、社名・金額・個人名がそのまま含まれている
いずれも「文章をきれいにしたい」という真っ当な目的から起きます。だからこそ、目的は良くても”中身”に注意、という意識づけが大切です。
迷ったときの判断基準
「これは入力していいのか?」と迷う場面は必ず出てきます。そのときの基準は、たった一つで十分です。
「この情報を、面識のない社外の人に、そのまま渡していいか?」
渡していい情報なら、生成AIに入力しても大きな問題にはなりません。逆に、「それはさすがに渡せない」と感じる情報は、生成AIにも入力しない。この問いを社内で共有しておくだけで、判断のブレが大きく減ります。
安全に使うための5つのルール
線引きを決めたら、次は”仕組み”で守ります。中小企業でも今日から実践できる5つです。
① 入力禁止事項をリスト化して共有する 「個人情報・機密情報は入力禁止」だけでは、人によって解釈が分かれます。上の4分類のように具体例を挙げてリスト化し、全員が同じ基準で判断できるようにします。
② 「学習させない設定(オプトアウト)」を使う 多くのサービスでは、入力データを学習に使わせない設定(オプトアウト)が用意されています。まずは利用中のサービスで、この設定がどうなっているかを確認しましょう。設定の有無・方法はサービスやプランによって異なります。
③ 業務では法人向けプラン・APIを使う ビジネス向けのプランやAPIは、入力情報を学習に使わない設定が標準になっているものが多く、無料版より安全です(例:Microsoft Copilotなどは学習に使わないと明示しています)。日常的に業務で使うなら、会社として法人プランを整備するのが安心です。
④ どうしても機微な内容を扱うなら、匿名化してから 社名や個人名を伏せ字にする、数字をダミーに置き換えるなど、特定できない形にしてから入力します。文章の”型”だけAIに作らせ、実データは自分で差し込む、という使い方も有効です。
⑤ 従業員への教育を行う ルールは、作るだけでは守られません。「なぜ危ないのか」を具体例とともに共有してこそ、一人ひとりが自分ごととして守れます。定期的な研修が効果的です。(→セキュリティ教育・研修)
無料版と法人版、何が違うのか
「無料版でも設定すれば大丈夫では?」という質問をよくいただきます。ざっくり整理すると、次のような違いがあります。
- 無料版・個人向け:手軽だが、初期設定では入力が学習に使われることがある。オプトアウト設定は自己責任で、社員任せだと徹底しづらい。
- 法人向けプラン・API:入力を学習に使わない設定が標準のものが多く、会社として管理しやすい。利用履歴の管理やアクセス制御ができる場合もある。
日常的に、業務で本格的に使うのであれば、会社として法人版を整えるほうが、結果的に安全でラクです。ただし、サービスやプランによって条件は異なるので、契約前に「入力データがどう扱われるか」を必ず確認してください。
そのまま使える「社内ルール」ひな形
小さな会社でも、A4一枚のルールがあるだけで安心感が変わります。たたき台としてお使いください。
【生成AI利用ルール(社内向け)】
- 次の情報は入力しない:個人情報/取引先・顧客の機密/自社の未公開情報/パスワード等の認証情報
- 業務利用は、会社が認めたサービス・プランのみとする
- 利用サービスは「学習させない設定」を有効にする
- 迷ったら「社外の人に渡していい情報か」で判断し、不明なときは上長に相談する
- 生成AIの回答は、そのまま使わず必ず人が確認する(誤りが含まれることがあるため)
まずはこの5項目から始め、自社の実態に合わせて育てていくのがおすすめです。
こんなご相談から、お気軽にどうぞ
「うちも使い始めたいけれど、何から整えれば…」という段階で構いません。実際、こんな入り口が多いです。
- 「社員が使い始めているが、ルールがなくて不安」
- 「どのサービス・プランを選べばいい?」
- 「入力してよい情報の線引きを、うちの業務に合わせて決めたい」
- 「安全に使うための社内研修をお願いしたい」
PC-Holicはどのベンダーからも手数料を受け取らない中立の立場なので、特定の製品を売り込むことはありません。御社の業務に合った”安全な使い方”を、一緒に設計します。
まとめ
生成AIは、正しく使えば中小企業の強力な武器になります。カギは、「入力してよい情報・いけない情報の線引き」を決め、学習させない設定や法人プランで守りを固め、社内で共有すること。難しい技術より、シンプルなルールと習慣が効きます。
「うちの業務で、どこまで生成AIを使っていい?」「安全なルールをどう作ればいい?」——そうした導入の設計を、PC-Holicは中立の立場で伴走します。福島県の中小企業向けに、無料の個別相談を承っています。(→生成AI活用・導入支援)
本記事は2026年8月時点の一般的な情報です。各生成AIサービスのデータの取り扱いは、サービスやプランによって異なり変更されることもあるため、利用前に各サービスの規約・設定をご確認ください。